イタリア王国とは
イタリア王国(1861-1946年)は、分裂していたイタリア半島を統一して誕生した近代国家です。サルデーニャ王国を母体とし、サヴォイア家が統治しました。
統一運動(リソルジメント)を経て1861年に建国され、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が初代国王に即位。以来、4代の王が85年にわたってこの国を治めました。
イタリア王国時代の銀貨は、ヨーロッパの近代造幣技術の粋を集めて製造されています。特に20リレ銀貨は大型で美しいデザインが特徴で、コレクターの間で高い人気を誇ります。
リットーレのデザイン ― ファシスト時代の象徴
この銀貨の裏面には、「リットーレ(Littore)」と呼ばれる古代ローマの執政官護衛が描かれています。
リットーレはファスケス(束桿)と呼ばれる棒の束を携えています。このファスケスはローマ共和政の権威の象徴であり、後にムッソリーニのファシスト党がそのシンボルとして採用しました。「ファシズム」という言葉自体がこのファスケスに由来しています。
銀貨に刻まれた「A.VI」はファシスト暦6年を意味します。これはムッソリーニ政権の「ローマ進軍」(1922年10月28日)を紀元とする暦で、1927年が「ファシスト時代6年目」にあたることを示しています。
ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世 ― コイン収集家の国王
この銀貨を発行したのは、イタリア王国第3代国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世(在位1900-1946年)です。
彼は歴史上最も有名なコイン収集家の一人として知られています。自身のコレクションと研究を基に編纂した「Corpus Nummorum Italicorum(イタリア貨幣大全)」全20巻は、今日でもイタリアコイン研究の基礎文献として参照されています。
第一次世界大戦では連合国側として参戦し勝利に貢献。しかし1922年、ムッソリーニのファシスト党を政権に就かせる決断を下しました。その後、第二次世界大戦でのイタリアの敗北、1946年の国民投票による王政廃止を経て、王家はイタリアを離れることとなります。
コイン収集家でありながら自らの貨幣政策に深く関与した国王の銀貨は、歴史的にも貨幣学的にも重要な意味を持っています。
コインの仕様
| 発行国 | イタリア王国 |
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| 額面 | 20リレ |
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| 発行年 | 1927-R A.VI(ファシスト暦6年) |
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| 君主 | ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世 |
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| 素材 | 銀(.800 / 銀80%) |
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| 重量 | 15.00g |
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| 直径 | 35.5mm |
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| エッジ | リーデッド(ギザあり) |
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| 造幣所 | ローマ(R) |
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| 発行枚数 | 3,518,002枚 |
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鑑定情報
本品はPCGS(Professional Coin Grading Service)によりMS63のグレードを取得しています。
PCGSの登録データによると、このコインのMS63は18枚が認定されています。大型の銀貨で未使用状態を維持しているものは希少です。
認定番号:338432.63/57596404
デザインの見どころ
表面:ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世の左向き肖像。周囲には「VITTORIO・EMANVELE・III・RE」(ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世国王)の銘文が刻まれています。髭と髪の繊細な彫刻が特徴です。
裏面:ファスケス(束桿)を持つリットーレ(執政官の護衛)と、座するイタリアを象徴する女性像。「ITALIA」「L.20」の銘文と、1927年およびA.VI(ファシスト暦6年)の年号が刻まれています。
本品は35.5mmの大型銀貨で、未使用状態を維持し美しい光沢が保たれています。ファシスト時代の芸術性の高いデザインと、コイン収集家国王の時代に発行された歴史的背景が、この銀貨の魅力を高めています。
参考情報
KM#69 / Krause World Coins