「雲上の女神」100コロナ金貨とは
本品は1908年にオーストリア帝国で発行された100コロナ・プルーフ金貨です。フランツ・ヨーゼフ1世の即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)を記念して製造されました。裏面に描かれた雲の上を舞う女神の姿から、日本では「雲上の女神」の愛称で親しまれ、世界中のコレクターから高い人気を集める名品です。
フランツ・ヨーゼフ1世と即位60周年
フランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916年)は、1848年から1916年まで68年間にわたりオーストリア帝国(後のオーストリア=ハンガリー二重帝国)を統治した皇帝です。18歳で即位し、ヨーロッパ史上最も長い在位期間の一人として知られています。
1908年の即位60周年は帝国全土で盛大に祝われました。この記念貨幣は、その祝典の一環として発行されたものです。裏面のラテン語銘文「DUODECIM LUSTRIS GLORIOSE PERACTIS」は「12ルストルム(60年)の栄光ある治世を成し遂げて」を意味しています。
デザインの解説
表面(オブバース)
フランツ・ヨーゼフ1世の右向き肖像が描かれています。晩年の皇帝の堂々たる横顔で、月桂冠は戴いていません。周囲には「FRANC IOS I D G IMP AVSTR REX BOH GAL ILL ETC ET AP REX HVNG」(神の恩寵によるオーストリア皇帝、ボヘミア王、ガリツィア王、イリュリア王、等々、ならびにハンガリー使徒王 フランツ・ヨーゼフ1世)の銘文が刻まれています。
彫刻師はルドルフ・マルシャル(Rudolf Marschall)とステファン・シュヴァルツ(Stefan Schwartz)です。
裏面(リバース)
本品最大の見どころである「雲上の女神」が描かれています。オリーブの枝を手に、雲の上を優雅に舞う女性像は、平和と繁栄の象徴です。女神の足元には豊穣の角(コルヌコピア)が配され、帝国の豊かさを表現しています。
上部には「1848」「1908」の年号と「100 COR」の額面、下部には「DUODECIM LUSTRIS GLORIOSE PERACTIS」のラテン語銘文が刻まれています。
アール・ヌーヴォーの影響を受けたこの流麗なデザインは、20世紀初頭のウィーンの芸術的水準の高さを物語る傑作です。
1908年のオーストリア
1908年のオーストリア=ハンガリー帝国は、第一次世界大戦前夜の繁栄と緊張の時代にありました。同年10月にはボスニア・ヘルツェゴビナの併合を宣言し、国際的な危機を招きました。文化面ではグスタフ・クリムトやエゴン・シーレが活躍し、ウィーンは「世紀末ウィーン」と呼ばれる芸術と文化の黄金時代を迎えていました。
コインの仕様
| 発行国 | オーストリア帝国 |
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| 額面 | 100コロナ |
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| 発行年 | 1908年 |
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| 記念 | フランツ・ヨーゼフ1世 即位60周年 |
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| 素材 | 金 (.900 / 21.6金) |
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| 重量 | 33.875g |
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| 直径 | 37mm |
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| 仕上げ | プルーフ |
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| 発行枚数 | 16,026枚(プルーフ) |
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| 造幣所 | ウィーン造幣局(Hauptmunzamt) |
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| 彫刻師 | ルドルフ・マルシャル / ステファン・シュヴァルツ |
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鑑定情報
本品はNGC(Numismatic Guaranty Company)によりPF55のグレードを取得しています。
PF55は「Choice Proof」に分類され、プルーフとしての製造品質を維持しつつ、100年以上の歴史の中で若干の摩耗が見られる状態です。プルーフ(鏡面仕上げ)として製造されたことが確認されている点が重要であり、通常打ちの100コロナとは異なる特別な一枚です。
認定番号:6915849-002
コレクターズノート
「雲上の女神」100コロナ金貨は、オーストリア金貨の中でも最も人気が高いコインの一つです。アール・ヌーヴォー様式の優美なデザイン、約30gを超える金の重量感、そしてハプスブルク帝国最後の輝きを伝える歴史的価値が三位一体となった名品です。